閉ざされた人々
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わたしはクルマに乗り、一人運転をしていた。
目的はあったのだろうが、今となっては憶えていない。
ただただ、だだっぴろい高速道路を走っていき、やがて景色は
赤褐色を帯びる砂が舞い上がる荒野に変わっていった。
すると、進んでいく道を間違えていることに気が付いた。
進路は進めば進むほど方向からどんどん離れてゆく。
修正するため左折できそうな道を探してみたもののそれらしき
道が見つからない。。
わたしは停まって地図を開くことにした。
地図をみる限り、幸いなことに少し走ったところに左折できる道
がある。まっすぐな太い道路が白線の道で書かれているものの、
まだ全区間開通しているわけではなく途切れていて。。。
でも、黒い線で本線まで補われている道。なんとか通れそうだ。
わたしは期待を胸にそこへ向かった。
荒野の長い一本の道路を走ると、丘を上ったところに左折
できそうな道があった。わたしはそこにクルマを停めた。
"どうやらここらしい。。"
堤防のように盛り土がされて道以外は低地になっており、
あたかも高台から眺めているよう。。左折する道は低地に
降りるため、直線上のまるで尾根を下るかのように、坂道に
なっていた。
その先には厳かにも赤い岩に一体化している施設があり、、
その脇には施設の屋上へと太い道路に繋がる道がある、
いわば要塞のような感じ。
"どうやら施設の屋上が公道となっているようだ。"
クルマが坂を下ろうとした時、ブザーが鳴った。
見ると砂埃で汚れた機械があり、センサーが作動して、
チケットが出てきた。
私はとりあえずそのチケットを手にし坂を下っていった。
私は施設を横目にして素通りする。。。。はずだった。
するとゲートが開いたのだ。
"ドウゾ中ニオ入リ下サイ"
施設内部に関心は湧いてなかったものの、女性の機械の
アナウンスに誘われ、この先進む旅の道中、気になり続けて
後悔するのもどうかとも思い、迷った結果その施設に入って
みることにした。
広い道に四角く開いた口へ暗い屋内へとクルマで入ってゆく。
すると、中は真っ暗でライトをつけてもほとんどなにも見えない。
怖くなって、引き返そうかと思ったが、暗くてそうすることも
できなく、前に進むしかない。
"ここはおばけ屋敷か?"
ピンと張り詰めた精神で暗闇の中標識を探し進んでいく。。
やがて支柱に反射する光でやっと出入口を見えた。
すると、ほっとしたのもつかの間一人の男が現れた。
"他所の者がなんのためにこんな所に来たんだ?
冷やかしか?"
"?"
私は男の言うことが何のことかわからなかったが、
ただ味方ではないことは明白であった。
私は"関わりたくない"気持ちから取り合わずそのまま
無視して進むことにした。
進んでいくと、そこで生活している人々の姿が現れる。
しかし残念なことに私の姿がわかると皆じっとこちらを見て、
しかもそれが睨んでいるようにも見えるのだ。
"観光客だそうよ。
何が面白くてこんなところに来たのでしょうね"
"オレ達を見て、きっと優越感を浸りに来たんだ。
嘲笑いに来たんだ。"
そんな声が聞こえた。
彼らからの冷遇はそこが政府による隔離施設であり
その傍観者と思われたことによるものだった。
政府から"隔離施設"という表現を避けるため、気軽に
他所から行き来できる集合住宅と謳いつつも、実際には
外に出るには何重もの審査が必要であり、生活の中に
いつも監視員が目を光らせている、まさしく監獄をイメージ
させる"隔離施設"がそこにはあった。
住民達はじっとこちらを見ている。。。。
"こんなはずじゃなかった。こんなとこに来るんじゃなかった。。"
そこの男たちがじっと見ているだけでなく、闘争心剥き出しで
包囲するように近づいてきていることがわかる。。
"ちがう! わたしはただ……。。ただ……。。"
どんなに否定しようとしても、彼らに納得させる説明が
できないと悟った。
わたしは彼らの領域に足を踏み入れてしまったのだ。
しばらく硬直状態が続いた後、襲撃され・・・・・・旅は終った。
ひとは思いがけない状況に翻弄され意図しない方向に
流されることがある。洪水による濁流に突然飲み込まれた
状況によく似ている。立ち向かうことはおろか態勢を立て直す
ことさえ許されない。
これを運命という者もいるが……わたしは知らない。