白紙の聖典
   

「あなたがそうさせてるんでしょ!!」
「!」
「ボ、ボクが??」
「・・・・」


 自分に対して、問い詰めていくうちにもう一人の自分が
見えてきた。
 判断に割り切れない時や後悔している時、癇癪をおこし
そうな気持ちをひたすら抑える時などそんな時現れる、
冷静な瞳で見て均衡を保とうとするもう一人の自分。。。。

 襲撃は、そんなもう一人の自分の仕業だと気が付いた。
すると敵と化した人たちは皆、突然苦しみだし、
急にチカラが抜けたように倒れこんだ。

 ふと見ると・・・
ヒトツ、闇で作り上げられたシルエットの人間が・・
影のカタチが整うと、こっちに向かって走りだし襲ってきた。
 その「影」がもう一人の自分なのは言うまでもない。
 「影」は強く、こちらの攻撃は避けられ、ボクは殴られる。
まるでボクの考えていることがお見通しかのように・・・
 ボクは逃げ、屋台の中に隠れた。
 しかし、やっぱり見つかってしまう・・・

「こうして欲しいんだろ!!」
 そう言って、ボクの首を締める。
「力尽きる。。。」
 そう思った瞬間、
なんらかに甘えようとしている自分の姿が脳裏に浮かんだ。
 甘えようとしている自分の姿が醜く、腹が立った。

 すると、重なっていた雲から木漏れ日がさしはさみ、
一筋の光がボクの顔を射した。
 それと同時に、首を締めている手が消え、
「影」の姿がすっと消えていった。

"た、たすかった・・・・"

 周囲を見ると、いつもとなんら変わらない日常の光景。
そこに一緒にテロと立ち向かった仲間がやってきた。


「あの聖典はどこへやった?」
ボクは仲間に尋ねる。すると
「聖典?なんのこと?」
仲間はそう答えた。ボクは、
「テロリストが持ってた謎の小包だよ!聖典が入ってて・・」
と、必死に問い詰めた。
「夢でも見てたんじゃねーの?」
と、仲間は軽く返事。
「聖典を手にして、テレビ局に行ったやんかー・・」
「・・・・・」
 仲間は笑い、ボクを相手にしなかった。

 爆破阻止から始まった出来事はすべて空想だったのか?

謎は深まる。

 ところで、何故ボスは聖典を爆破させたかったのか?
ボクはじっと考えて、推測してみた。
 ボスも聖典を開き、自分の「影」に苦しめられていて、
それで聖典を爆破させたかったのだろう。
いや、そうに違いない。
 テレビ局を占拠したことについては、
「影」に心の隙間を突かれないように、自分のすべてを
アピールしようとするためだったのかもしれない。
 さらに、推測してゆく。
 ボクの「影」は、ボクに近づいた周囲の人間すべてに
とり憑いて仲間を作らせなかった。
しかし、それは甘えさせないようにするためだった。
 ボスの仲間は憑依されなかったが、ボスにはボクとは
別のところに悔い改めなくてはならないところがあった。
 そう思うと、説明がつく。

 再び一連の出来事はすべて空想だったのか自分に問いた。

いや、あの世界はあるはずだ!この目で見たんだ!
少なくとも、白紙の聖典は・・・
 ボクは、白紙の聖典の存在を信じている。


"あの白紙の聖典はボクに教えてくれたんだ・・・"
「ヒトに甘えようとしない立派な人間になれ!」っと。


(終わり)



白紙の聖典。

書いてあっても、自分では白紙に見える聖典。

あなたの本質を映し出すそれは、きっとどこかに・・・

   
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